長命住宅の提案とその基礎を築くのは我々建築家の仕事です。
それを維持管理するのはやはり住まう人以外にはいないのです。
住まう側も、業者任せのメンテナンスはやめなければなりません。
それが当り前になっても、専門家でなくてはできないメンテナンスはまだまだ沢山あるのですから。
メンテナンス = 規格化
住宅の中には必ずいつかは交換しなくてはならないものがあります。
室内の建具などはその類に入ります。
しかし、現在の日本では各メーカーがそれぞれに個性豊かな種類とサイズを持ち続け販売を繰り返すものですから新築から数年後、一本の建具が壊れた時には大変なことになるのです。
私達の経験の中でも良くあるのは、貼り物の建具(ドアの表面にシートで仕上げてあるもの)のシートが破れ交換したいとき、または何かの拍子で建具が壊れてしまった時に、新築時購入したメーカーに同等品が無い時。
同等品で無くとも同じサイズがあればドアの交換だけで済むからと探しても、同じメーカーでありながらサイズさえも変わってしまっているのです。
住宅と同じく、造っては壊れることで成り立ってきた産業は、ユーザーに新築後数年でドアの交換で済む工事を、枠ごと交換か、もしくは壁紙の張替さえもしなくてはならないというところまで追い込むのです。
アメリカでは、室内建具のサイズは高さを揃え、巾は2〜3フィートまで2インチづつに刻み規格化されています。ユーザーはホームセンターで同じサイズの気に入ったドアを買ってくることで建具の交換ができます。
私達が取り入れている北欧の室内ドアはドアのサイズもさることながら、蝶番や金具の位置も同じなのでドアを仕入れるだけで誰にでも交換ができます。
私達建築に携わる人間達は、もっとメーカーを教育する立場に立たなければなりません。また、個人の作品のみを主張する設計事務所も同様です。
いつかはやらなければならないメンテナンスの範囲にまで、自分のデザインのみを主張する家造りはこれからは必要ありません。
タイル調のサイディングのように数多くのバリエーションを持ち、新築時には何を使おうかと夢さえ持たせてくれ、家造りを楽しませてくれる商品は、10年ほど経ったときどうやってメンテナンスすればよいのでしょうか?
剥して張り替えるのでしょうか?それとも風合いを殺し吹き付けし、タイル調はどのような景観になってしまうのでしょうか?
私達は10年、20年後のそんな住宅を想像しながら家造りを提案しているのです。
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